2017年8月17日木曜日

当たり前という幸せ

7月28日(金) 最愛の妻が癌の為亡くなりました。38歳でした。

長文すみません。
昨年5月に待望だった赤ちゃんが妻のお腹の中にいることが分かりました。なかなか子供ができなかったので二人で本当に喜んでいたのですが、その後すぐに子宮がんがあることが分かりました。天国から地獄に落とされる気持ちでした。
クリニックの診断ではステージ1bではあるものの進行の早い腺癌である可能性もあるとのことだったため、妻の命を優先するなら子供は諦めてすぐに手術をしなければならないと言われ、周囲の人達からもそうした方がいいと言われておりました。もちろん私もその思いでしたが、「この子は私に癌がある事を教えるためだけにある命じゃない、だからこそ絶対産まなきゃいけないんだ。」という妻の強い気持ちもあり、まさに映画やドラマに出てくるような命の選択でした。普通の幸せを求めていただけなのになぜ妻が癌にならなければならないのか、毎日二人で泣いていました。
その後セカンドオピニオンで名大病院に行き、精密検査の結果 比較的進行の遅い扁平表皮癌であることがわかったため、名大病院の先生方達が特別チームを組み、赤ちゃんを手術で安全に取り出せる32週まで抗がん剤を使いながら引き伸ばす治療を始めることになりました。子宮癌合併妊娠による腫瘍&胎児同時取り出しという天下の名大病院でもまだ過去に5例しかない極めてハイリスクな方法でした。
経過を観察しつつ治療を続けていたのですが、思っていたより癌の進行が早く赤ちゃんが29週の9月の時点で緊急手術をしました。幸い1096gの未熟児でしたが赤ちゃんを無事取り出し、妊娠のために通常よりも遥かに大きくなった子宮も全摘することができ、手術は成功したようでした。
子供はNICUの中で順調に育ち、ほっと肩の力を抜いて二人で将来のことをいろいろ相談しているさなか再び地獄に落とされました。2月に再発&転移が見つかりました。術後に念のため抗がん剤と放射線をしていたにも関わらず肺·腹膜·骨盤内·リンパ節への複数遠隔転移だった為 ステージ4bの診断でした。
そこから先、三大治療では抗がん剤しか残されていなかった為、子供の世話をしつつ懸命に闘病をし続けました。食事療法、サプリメント、ランニング、体操、免疫細胞療法、ハイパーサーミア療法、酵素風呂、鍼治療、温泉療法、先祖供養、水子供養…。
治療を繰り返していくうちに病気や抗がん剤の副作用で血管内に血栓ができてしまい、血栓が肺に流れると一瞬で命を落とすと言われたので、血圧を上げる要素のある治療方法は全て出来なくなり、治療法がぐっと減ってしまいました。さらに、腹水が尋常じゃないくらい貯まるようになってしまい、2日に1回お腹に針を刺して腹水を抜いてました。癌が大きくなり腸が動きにくくなってしまったので、ご飯を食べることもほとんど出来なくなってしまいました。筋肉のタンパク質がどんどん癌に吸い取られていってしまい、体がやせ細って痛くてたまらないと泣きながら訴えてきても私たちにはどうすることもできませんでした。その後、痛み止めとして医療用麻薬を使うようになり、頭がぼーっとしてまともに考えることも喋ることもままならなくなってしまいました。胆汁が逆流するようになったので、お茶を飲んで口に手を突っ込んで胆汁を吐くようにしていました。妻の体は日に日に悪くなっていき、呼吸することが精一杯。それでも亡くなる最後の日のギリギリまで免疫細胞療法をすることで私の体は癌と戦ってると言っていたし、頑張って自力でトイレにも歩いて行ってました。そして亡くなるその瞬間、私の手を握りながら静かに息をひきとりました。

妻は短い生涯だったのかもしれません。子供を諦めて早期手術をすれば助かったのかもしれません。でも、妻は念願だった元気な子供を授かることができ、その手に抱くことができました。その瞬間はきっと最高に幸せだっただろうなと思います。

妻は生前、私のこの闘病経験が誰かの役に立てたらいいなと言っていました。だから、ブログを読んでくださっている女性の方へ伝えたい。
まさか自分が病気になるなんてと思わずに子宮がん検診や乳がん検診を受けてほしい。

毎日仕事をすること。
元気に走ること。
好きなものを好きなだけ食べること。
夫婦で相談し合えたり、喧嘩をしたり、共感したりすること。
妻は病気が進行すると共に今まで当たり前にできていたことが一つ一つ出来なくなっていきました。
当たり前にある幸せを大切にして欲しい。
そう妻から教えてもらった気がします。

どこへ行っても、何をしてもいつも一緒だったね。
思い出をいっぱいくれてありがとう。
赤ちゃんを生んでくれてありがとう。
最後まで病気と戦ってくれてありがとう。
歳をとって、おじいさんおばあさんになっても仲良く手を繋いで歩くようなそんな夫婦になりたいねっていつも言ってたね。

当たり前に来るはずだった妻と私と子供で暮らす未来。
それは叶いませんでしたが、きっと妻は私達が幸せになることを願って天国から見守ってくれていると思います。
息子は本当に元気に育っています。この子がここにいることは本当にキセキだと思います。
だから私は父親として前を向いて生きなきゃ。


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